対象疾患と治療

心臓弁膜症

心臓には4つの部屋(左心房、左心室、右心房、右心室)があり、それぞれの部屋の出口にある弁(僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁)のはたらきにより血液は一方通行に流れています。弁膜症とは、これらの弁が正常に機能しなくなる病気のことをいいます。弁が固くなり開きが悪くなる「狭窄症」と、弁が変形などにより閉じなくなり逆流を生じる「閉鎖不全症」があり、4つの弁のうち、僧帽弁と大動脈弁の弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症)が特に重要です。

弁膜症は、軽度であれば薬物治療で経過観察することが可能ですが、進行すると呼吸困難などの心不全症状や失神を来すことがあり、手術が必要です。当センターでは、内科と外科で綿密なカンファレンスを行いながら、治療方法を決定しています。

弁膜症の手術には、自身の弁を残して逆流の原因となる部分を修復する「弁形成術」と、自身の弁を切除し人工弁を植え込む「弁置換術」があります。人工弁には、金属でつくられた機械弁と、ウシやブタの心膜からつくられた生体弁の2種類があり、それぞれ耐久年数や、弁周囲の血栓形成を予防する抗凝固療法に関して違いがありますが、基本的には年齢に応じて、若年者には機械弁、高齢者には生体弁を使用します。術後は2週間程度で退院となります。

心臓の手術は、高齢の患者様にはお身体への負担が大変大きいです。当院では、内科と外科でハートチームを結成し、2016年より高齢者の大動脈弁狭窄症に対して、経カテーテル的大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation:TAVI)を開始しました。足の付け根の血管からカテーテルを挿入し人工弁を留置する手術で、術後は1週間程度で退院できることが多く、良好な成績を得ています。



大動脈弁狭窄症に対する人工弁置換 僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術