MitraClip(マイトラクリップ:経皮的僧帽弁接合不全修復術)とは、外科手術で胸を開くことなく、また心臓を止めることなく(=人工心肺装置を使用せずに)、僧帽弁閉鎖不全症(以下MR)に対する手術が行える治療です。
マイトラクリップは2005年にヨーロッパで施行がスタートし、2018年4月より日本でも保険診療の範囲内で、治療を行うことができるようになりました。当院でも2019年10月から実施し、施術数を伸ばしています。
マイトラクリップを使った研究では、COAPT試験が有名です。2018年の米国の論文誌『New England Journal of Medicine』にて、試験の内容や結果が公表されています。
本試験は米国とカナダの89施設において実施されました。
試験の概要としては、治療ガイドラインに準じた最適な薬物療法を最大耐量で行っても症状が持続している、中等度や高度の心機能の低下によっておこった『機能性MR』のある心不全患者さん614人が対象に、マイトラクリップの安全性と治療の有効性を調べる目的で行われました。
薬物療法だけの患者さんと薬物療法とマイトラクリップで治療をした患者さんをランダムに約半数ずつで分けて治療と24カ月の経過観察をしています。
その結果、マイトラクリップ+薬物療法群の方が、薬物療法だけの群よりも、24カ月以内の心不全再入院を明らかに抑えていたこと、また24カ月以内のあらゆる原因の死亡の割合も明らかに抑えていたという報告でした。
本治療は全身麻酔を行い気管内挿管による人工呼吸管理の下に、太ももの付け根の血管(静脈)にカテーテルを挿入して施行します。全身麻酔導入後、リアルタイムに心臓の内部を観察しながら治療を進めるために、経食道心臓超音波を食道に入れます。
資料提供:アボットジャパン合同会社