横浜市立大学附属市民総合医療センターは、トランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬ビンダケル(一般名 タファミジスメグルミン)の処方施設として日本循環器学会より認定されました。
トランスサイレチン型アミロイドーシスは、トランスサイレチン(TTR)という4量体のタンパク質が加齢(野生型)や遺伝変異(変異型)により単量体に解離して変性が起こることによりアミロイド線維が形成され、全身の組織内へ沈着することが原因で障害が生じる疾患です。心アミロイドーシスは、そのアミロイド線維が心筋に沈着することで、難治性の不整脈や心不全等により最終的に死に至る可能性のある進行性の疾患です。変異型は比較的稀な疾患ですが、野生型トランスサイレチンアミロイドーシスは以前 老人性全身性アミロイドーシスと呼ばれていた疾患であり高齢化の進んだ現代では頻度の多い疾患とされています。心不全の原因としてもトランスサイレチン型心アミロイドーシスの重要性が注目されています。
ビンダケルは2018年9月にNew England Journal of Medicineに掲載されたATTR-ACT試験(国際共同・多施設・3群・並行群間比較・プラセボ対照・二重盲検・無作為化第3相臨床試験)(N Engl J Med 2018; 379:1007-1016. DOI: 10.1056/NEJMoa1805689)において、その有効性が報告されました。ATTR-ACT試験では、野生型または変異型のATTR-心アミロイドーシス患者さんを対象に30カ月間の死亡と心血管事象に関連する入院頻度を追跡調査しています。プラセボに比較して、タファミジスの投与により死亡リスクが30%低下、心血管事象に関連する入院頻度が32%低下しました。これらの臨床試験結果に基づき、2019年3月に適応拡大され変異型に加えて野生型を含むトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬として承認されました。
ビンダケルの処方認定施設となり、心不全の患者様へのより良い治療の提供が可能となります。横浜市立大学附属市民総合医療センター 心臓血管センターでは、急性冠症候群(心筋梗塞や狭心症)、心臓弁膜症、不整脈、末梢動脈疾患の患者様の加療とともに、心不全患者様への最新の治療にも力を注いでいます。